ニューヨークで新聞社の社長なんかをやっています。今年で在米11年になります。在ニューヨーク歴も11年です。

ニューヨークで働いている日本人は大きく2つに分かれます。日本の企業が派遣している駐在員か、あるいは留学という形でこっちの大学を卒業した現地採用か。僕はそのどちらでもなく「来たくて来て」現地の新聞社の発行人をしているという、わりと稀なケースかもしれません。その点では今、日本でこれを読んでいただいている方には共感を持ってもらいやすいのではないかと思っています。企業が派遣したエリートでも、こちらの大学を卒業した優秀な学生だったわけでもない。日本の大学を中退して、日本のサラリーマンを経て、この街に憧れて単体で乗り込んで来た、そんな感じです。

住まいはマンハッタンのMurray Hillというエリアですが、ミッドタウン・イーストと言うほうが知られているかもしれません。ちょうどエンパイア・ステートビルとクライスラービルのてっぺんを線で結び、その線上の、面白いほど真ん中に位置するところにコーアップがあります。キングコングが登ったあのビルと、アルマゲドンで破壊されたあのビルの中間点です。

窓から体を乗り出して、首をぐぐっと伸ばすと左にクライスラー、無理な体勢で右に無理やり振り向くとエンパイアが見えるので、人に聞かれたときは「ええ、リビングからはクライスラーとエンパイアーが同時に一望です」と嘘をつくようにしています。

オフィスはそこから歩いて5分のマジソンアベニュー沿いにあります。グランドセントラル駅とNY市立図書館のすぐそばです。ライオンが2匹座っている、あの図書館です。大好きなタイムズスクエアにも  5分歩けばたどりつきます。マジソンアベニューというと、日本の方にはカッコよく聞こえるかもしれませんが、もちろん、表参道ヒルズとかの方がずっとオシャレでずっと洗練されています。

仕事は「US Weekly Biz 」という全米版在米邦人紙を発刊しています。前身が国際ジャーナリストのあの内田忠男先生らが37年前に創刊された「週間ビジネスニュース」という業界では最も歴史のある媒体です。先日、ニューヨークに来られた内田先生とお話しした際、「あなたの好きなようにすればいい。もう時代が変わったのだから」とおっしゃって頂きました。

その“好きにした”結果が、ついて来てくれたスタッフたちとつくった今の「US Weekly Biz」です。

時代背景から言っても、本格的な紙のニュースペーパーの進出はこの「US Weekly Biz」が最後だと思っています。

つまり最初の新聞であり、最後の紙の新聞だと勝手に思っています。

このご時世、まだ紙の新聞なの?と問いかけてくる時代に対する答えを毎週、毎週発刊しています。そして誇っていい正解、だと思えるよう日々マンハッタンをスタッフ一同取材に広告営業に走り回っています。誰かに「インテリのブルーワーカーだな」と言われたことがあり、今はその言葉が気に入ってます。インテリではないのだけれど。

この仕事をすると、日々多くの人にお会いすることになります。

例えば、タイムズスクエアにオフィスを構えた全米BIG5に入る会計事務所のアメリカ人の先生と英語でビジネスミーティングをした帰りに、イーストビレッヂの焼き鳥屋の大将と一緒に季節メニューを考えたりする。そんな仕事です。ディファーレッド・タックス・アセットのあとのハツ、ずり、ネギマです。

NYデビューしたAKBフォーティーなんとかのインタビューとイタリア系違法ボクシング試合の潜入取材が同じ日にあったこともあります。秋元プロデュースの後の闇ギャンブルです。

せっかくこれだけ人に会える仕事をしているので、お会いできた方の事を書ける場所があればいいなと書き始めました。

当初、NYの有名なブロガーの方に自分も始めようと思っていると話したところ、彼女は矢継ぎ早に 「コンセプトは何ですか ? ターゲットはどこ ? アフィリエイトを考えて構成しますか?」と聞いてこられました。( あ、アふィり、、??)

コンセプトはありません。ターゲットはどこでもないです。好きなことだけ好きに書くので、しいて言うなら、日本で心配してくれている人たちに「元気でやってるな」とわかってもらえればそれでいい。だからコメント欄もありません。

可能なら「10代の頃の自分」のような、少しだけ日本が狭いと感じていて、根拠もなく“いつか世界に出る自分”を想像(妄想)している、特に田舎のポンコツ男子中高生とかに読んでもらえたら嬉しい。彼らにとってのニューヨークを、世界を垣間見ることができる窓になればいいなと思います。

タテの道がアベニュー、横の道がストリート、という基本中の基本なところから書いているので、今さらNY在住の方には面白くないかもしれません。あるいは読んで気を悪くされる方もいらっしゃるかもしれません。なるべく気をつけるつもりですが、その場合は大変申し訳なく、そして読みたいと思って頂けた方のみ、続けて読んで頂ければ幸いです。読んでいただく方のヒマつぶしになったら、とても嬉しいです。

高橋克明

めちゃくちゃ愛想の悪いウエイトレスのいる、ブライアント・パーク沿いのダイナーにて。この国特有のマズすぎるコーヒーを飲みながら(麦茶味)。店名、書いてやろーかな。